「便利ツール欲しい病」と最初に作ったもの
「これ、ツールがあれば便利なのに」
こういうことを考え始めると止まらないタイプです。メモアプリには常に「作りたいもの」リストが蓄積されていて、使いもしないのに付け足されていきます。スクロールするたびに「あ、これも入れてたんだ」となる、いつ消化されるかわからないバックログ。工房主はこれを 「便利ツール欲しい病」 と呼んでいます。
ただ長い間、そのリストは「眺めるだけのリスト」でした。作り方が分からないから。作れる人を雇うには大げさすぎるから。フリーランスに頼むには予算がないから。そうやって、アイデアだけが静かに積み上がっていました。
最初のひとつはスマホ料金の比較ツール
その「眺めるだけリスト」から最初に形にしたのが、スマホ料金の比較ツールです。
きっかけはシンプルでした。家族のスマホ料金を見直そうと思い、複数のキャリアのプランを横並びで見たかった。でも各社のサイトを別タブで開いて、条件を揃えながら見比べるのは思いのほか面倒で、「同じ画面に並べて見られれば絶対便利」と感じました。これはリストの中でもかなり古い方のアイデアでした。
「どうせ自分には作れない」とずっと思っていたのですが、そのころちょうど AI を使った開発が話題になっていて、「試しにやってみようか」という気分になりました。
やってみると、思っていたより形になった
最初に Claude Code に「スマホ料金を比較できるツールを作りたい」と伝えたとき、正直どこまでできるか半信半疑でした。コードは読めないし書けない。指示だけして何かができるとは思っていませんでした。
でも、思っていたよりずっと動くものができました。
「この列が欲しい」「ボタンを押したら並び替えたい」「スマホで見ると崩れる」といった日本語の要望が、かなりの精度で反映されていく。最初は「本当にこれで合ってるのか?」と不安でしたが、いくつか要望を出して修正してもらううちに、それっぽい UI が仕上がっていきました。
最初の数時間は、「動くものができた」という驚きで頭がいっぱいでした。「これはいけるかもしれない」という手応えが初めて生まれた瞬間でした。
苦労した点:「合ってるかどうかが分からない」
ただ、一番困ったのは 「AI が出したデータが正しいかどうかを自分で確認できない」 という問題でした。
料金は実際のキャリアサイトを見ないと正確にはわかりません。AI が自信満々で出した金額が、公式サイトと違う、ということが何度かありました。ツール自体は動いているのに、中身の数字が古かったり微妙にズレていたりする。「動くこと」と「正しいこと」は別の話なんだ、というのをこのときはっきり実感しました。
結局、データは全部自分で各社の公式サイトを開いて確認する、という作業が発生しました。これが思いのほか時間がかかる。「AI で楽になると思ったら、データ検証という別の作業が増えた」という感覚です。
でも、この体験が後から役に立ちました。「AI が作るのと、AI が調べるのは別だ」 という感覚が身につき、以降のツール作りでも「この部分は自分で確認が要る」という判断を早めにできるようになりました。
最初の1本が、一番時間がかかる
ツールの数が増えてから気づいたことがあります。
最初のスマホ料金比較は、一番時間がかかりました。作り方を知らなかったし、AI への指示の出し方もわからなかったし、何が問題で何が問題でないかの判断もできなかった。でも一通りやり遂げることで、「自分はこういうふうに作っていくんだ」 という型が生まれました。
2本目のホテル検索を作るときは、最初よりずっとスムーズでした。指示の出し方が分かってきたし、「ここはハマりやすい」という勘所がなんとなく摑めてきた。3本目、4本目と進むうち、最初は途方もなく見えた「ツールを1本作る」という作業が、手の届く範囲のものになっていきました。
「1本目は遅くて当然」という気持ちで諦めずにやり通したことが、今の工房のベースになっています。メモアプリのリストは今も減っていませんが、「いつか形にできる」という手応えはちゃんとあります。
いまでも病は治っていない
「これがあれば便利なのに」という感覚は、ツールを作れるようになってからむしろ増えた気がします。「これ作れそう」と思ってしまうから、アイデアがリストに入る前に「作ってしまおうか」という誘惑が生まれる。
病の症状が変わっただけで、治ってはいません。どちらかというと悪化しています。でも以前と違うのは、リストが「眺めるだけ」でなくなったことです。アイデアには、いつか出口がある。そう思えるようになったのが、最初の1本を作り終えた一番の収穫だったかもしれません。
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