個人ツールを公開ツールにするとき、何が変わるか
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私は、最初は自分のために小さなツールをいくつか作ってきました。
そのうちのいくつかは、あとから「これ、公開してみようか」という気持ちになって、公開版に作り直しました。やってみて分かったのは、個人ツールと公開ツールはかなり違う、ということです。
自分一人が使うだけなら、多少雑でも、自分が分かっていれば動きます。でも知らない人が見るとなると、そうはいきません。今回はその「変わること」を、自分の感想として整理してみます。
具体例として一番分かりやすいのは、自宅で使っていた楽天最安値検索ツールを公開版にしたときの話なので、所々それを引き合いに出します。そのツール自体をどう作ったかは別の制作記に書いたので、ここでは深入りしません。
1. 「自分一人」を前提にできなくなる
個人版は、自分一人が使うだけです。
だから、見たいときにデータを取りにいけばよくて、深く考えなくても困りませんでした。一度に1人、自分しか触らないので、同時に何人も来たらどうなるか、なんて想像する必要もありません。
でも公開版では、いつ誰が来るか分かりません。もしアクセスのたびに外部の入口へ問い合わせる作りにしていたら、来た人の数だけ問い合わせが走ってしまいます。これは相手側にもこちら側にも優しくない。
そこで公開版では、あらかじめデータを用意しておいて、来た人にはそれを見せる という形に見直しました。来た人ごとに毎回取りにいくのではなく、保存しておいたものを配るだけ。これなら裏側で重い処理を毎回走らせずに済むので、アクセスが増えても負荷を抑えやすくなります。
「自分一人のときは起きなかった問題が、公開すると顔を出す」というのが、最初の気づきでした。
2. データの鮮度に責任が出てくる
個人版なら、「ちょっと古い情報でもまあいいか」で済みます。古いと思えば自分で取り直せばいいだけだし、その判断も自分でできます。
でも公開版では、見ている人が表示された数字をそのまま参考にすることがあります。いつ取得した情報なのか、どれくらい古いのかは、見ている側には分かりません。だから、「いつ時点の情報か」を見える形にしておく ことが大事になりました。
値段や在庫のように動くものを扱うなら、なおさらです。私の場合は、表示している数字の近くに取得日時や更新日時を出して、最終的な条件は元のページで確認してもらう前提にしました。サイト上の数字は「その時点で取った参考の値」であって、確定値ではない、という立て付けです。
どれくらいの頻度で更新するか、という線引きも自分で決める必要があります。毎秒最新である必要はないけれど、放っておいて古くなりすぎるのも違う。扱っているものの性質に合わせて「これくらいの間隔なら実用上困らない」というラインを引くのは、公開してはじめて真剣に考えたことでした。
3. 注意書きを、しつこいくらい入れる
個人版には、注意書きなんてほとんどありませんでした。注意すべきことは全部自分の頭の中にあったからです。
でも公開版では、その「頭の中」は誰とも共有されていません。だから、書いておかないと伝わらない。
私は、価格を扱うツールでは特に、表示の条件や「最後は元のページで確かめてください」という案内を、目立つ場所にしっかり入れるようにしました。
表示している情報は取得時点の参考情報です。最終的な金額や条件は、リンク先の公式情報や販売ページでご確認ください。
くどいかな、と思うくらいでちょうどいい、と感じています。自分なら当たり前に分かっていることほど、初めての人には書かないと伝わらない。注意書きは、自分の「暗黙の前提」を文字にして外に出す作業なんだな、と思いました。
4. 「初めて見た人」の目線で見直す
個人版は、自分が分かっていれば成立します。説明がなくても、ボタンの意味も、数字の見方も、自分なら分かるからです。
公開版でつまずいたのは、まさにここでした。自分には自明なことが、初めて見た人には何も伝わらない。
トップに何の説明もないと、来た人は「これは何をするツールなのか」が分からないまま帰ってしまいます。数字が並んでいても、それがどういう意味の数字なのか、何と比べたものなのかが分からなければ、ただの羅列です。
たとえば、内容量の違うものを並べて値段だけ見せても、比べようがありません。私のツールでは、量あたりの値段(単価)に直して並べることで、はじめて「こっちの方が割安」と分かるようにしました。これは自分用のときは頭の中で勝手に換算していたことで、公開して「他の人は換算してくれない」と気づいて、表に出した工夫です。
「自分だけが分かればいい」から「知らない人が見ても誤解しにくい」へ。これが、公開版で一番大きく頭を切り替えたところでした。
5. 受け取る窓口をつくる
個人版は、自分が欲しいものだけ入っていれば十分でした。リストは自分の都合で増やしたり減らしたりすればいい。
公開版にしてから、「こういうものも扱ってほしい」という声を受け取れる窓口を用意してみました。私の場合はトップにリクエストの受付を置いただけですが、これがあると、自分の都合だけで閉じていたものが、少し外に開かれます。個人情報や急ぎの問い合わせは入れないでもらうように、案内も添えるようにしました。
自分が普段使わないものでも、求めている人がいれば足してみる。すると「世の中には同じことで困っている人がいるんだな」と実感できて、これが地味にうれしい。自分のために作ったものが、少し整えると誰かの役にも立つかもしれない——その手応えは、窓口を開けてはじめて返ってきたものでした。
やってみて思ったこと
公開版に作り直すのは、機能を派手に足す作業ではありませんでした。むしろ、自分の頭の中にあった暗黙の前提を、ひとつずつ外に出していく 作業だった気がします。
一度に来る人が増えても困りにくい形にする。いつ時点の情報か見せる。注意書きを書く。初めての人に伝わる言葉に直す。声を受け取る窓口をつくる。どれも派手ではないけれど、「自分用の小さな道具」と「誰かが見るツール」を分ける、地味で大事な差でした。
手間は増えます。でもその手間を含めても、自分のために作ったものが少しずつ公開ツールに育っていく感じは、なかなか面白い体験だなと思っています。
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