← 制作記一覧へ

たった1文字の「'」がランドマーク検索を止めた話

公開: 2026-07-15 · #89 / 最終更新: 2026-07-15 ホテル検索失敗談データ整備再発防止

📌 記事の取り扱いについて(公開当時の内容を含みます — タップで詳細)

本記事は公開当時の体験・気づきをまとめたものです。現在のツール数・プラン数・対象年齢・記事数・仕様とは異なる場合があります。最新の内容は各ツールページをご確認ください。ツールや外部サービスの仕様・料金は変更されることがあるため、利用前には各公式情報も併せてご確認ください。記載に誤りを見つけられた場合はお問い合わせフォームよりご連絡いただけると助かります。

ランドマークをどっさり追加して、うきうきしていた

ホテル検索ツールには、出発地点を選んで「そこから行きやすい宿」を探せる機能があります。これまでは駅が中心でしたが、観光施設も選べたら便利だろうと思い、駅や観光施設のランドマークを大量に追加しました。

家族連れが行きそうな場所、旅行の目的地になりそうな場所。リストが長くなっていくのを眺めながら、「これで検索の入り口がぐっと広がったな」と、正直かなりうきうきしていました。機能追加の作業のなかでも、選択肢が増える系の作業はいちばん気分がいいものです。

「アンパンマンミュージアムで検索しても何も出ない」

ところが直後に発覚しました。アンパンマンミュージアムを出発地点にして検索しても、何も出ない。

最初は「その施設だけ登録に失敗したのかな」と軽く考えていました。ところが確かめてみると、様子がおかしい。その施設だけではなく、ランドマークの選択そのものがまともに機能していないのです。追加したはずの施設たちが、まるごと読み込まれていないのです。

増やしたつもりが、使えなくなっていました。背中がすっと冷たくなりました。

犯人は「Kid’s Us Land」のアポストロフィだった

AIの目も借りて、データを一件ずつたどっていくと、犯人が見つかりました。追加した施設のなかにあった「Kid’s Us Land」。名前に含まれるアポストロフィ(‘)です。

ランドマークのデータでは、施設の名前を記号で囲んで「ここからここまでが名前ですよ」と機械に教えています。ところが「Kid’s」の「‘」が、その囲みの記号と同じでした。機械はこれを「名前はここで終わり」と誤解します。すると、そこから先のデータのつじつまが合わなくなります。

人間なら「Kid’s は Kid’s でしょ」と読み流せるところを、機械は文字どおりにしか読みません。この融通のなさは知識としては知っていたつもりでしたが、実際に自分のツールが止まると重みが違います。

なぜ1件の破損が、全体を道連れにするのか

不思議だったのはここです。壊れていたのは1件だけなのに、なぜランドマーク検索が全部使えなくなるのか。

教えてもらって腑に落ちたのは、「機械はデータを一枚の長い巻物のように読む」という話でした。途中につじつまの合わない箇所があると、そこで読むのをやめてしまいます。人間のように「この行は変だから飛ばして、次を読もう」とはしてくれません。1件の破損は、その1件の問題では済まず、巻物ごと読めなくなります。

つまり、データを増やせば増やすほど「どこか1箇所の事故が全体を止める」危険も一緒に増えていきます。便利にしたつもりの追加作業が、そのまま地雷を埋める作業にもなりえます。これがプログラムの怖いところだと、身をもって知りました。

再発防止は「公開前に、機械に読ませてみる」

直すこと自体は、名前の囲み方を改めるだけで済みました。アンパンマンミュージアムでの検索も、ちゃんと結果が出るようになりました。

ただ、直して終わりにはしたくありませんでした。今回の問題は、公開する前にデータを一度機械に読ませてみれば、その場で気づけたはずのものです。人間の目視では「‘」の1文字なんてまず見落とします。実際に見落としました。

そこで、公開前に「データが正しく読み込めるか」を機械にチェックさせる工程を、手順として挟むことにしました。目で確かめるのではなく、本番と同じ読み方をさせて、エラーが出ないことを確認してから出します。

たった1文字が全体を道連れにするのなら、守りも1文字単位でやるしかありません。それは人間の注意力ではなく、機械の仕事です。うきうきした追加作業のあとほど、こういう地味な確認が効くのだと思います。


← 他の制作記を見るトップお問い合わせ