「大人」という言葉に二つの意味があると知った日
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検索結果に「あれ?」と思う宿が
ホテル検索ツールのデータを眺めていて、手が止まりました。明らかに毛色の違う宿が混ざっていたのです。いわゆる大人向けのホテル、レジャーホテルと呼ばれる類のものでした。
家族旅行の宿を探す人が使うことを想定しているツールです。これはまずい、と思いました。内容がどうこうという以前に、探している人が求めていないものが出てくること自体が、検索ツールとして落第です。
なぜ紛れ込んだのか
考えてみれば当然で、私のツールは宿泊予約サイトのデータをもとにしています。予約サイトには本当にいろいろな宿が登録されていて、その中にはこの種のホテルも普通に含まれています。取り込むときに何も選別していなければ、そのまま入ってくるわけです。
悪意も事故もなく、ただ「ふるいがなかった」というだけの話でした。ならば、ふるいを作ればいい。ここまでは簡単な話に思えました。
「大人」で消すと、消えてはいけない宿が消える
ところが、これが思ったより難しかったのです。
最初に思いつくのは、施設名や紹介文に「大人」という言葉があったら除外する、という単純な方法です。ところが試しに考えてみると、すぐに困ったことに気づきました。世の中には「大人専用の宿」というものがあるのです。お子さま連れの宿泊をお断りして、静けさを売りにしている高級旅館。あれも紹介文には堂々と「大人」と書いてあります。
同じ「大人」でも、意味がまるで違います。片方は消したいもので、もう片方はむしろ良質な宿としてきちんと出したいもの。言葉だけ見ていたら区別がつきません。日本語というのは、こういうところが本当に面白くて、厄介です。
曖昧な言葉ではなく、言い切れる言葉を選ぶ
そこで方針を変えました。「大人」のような曖昧な単語で白黒つけるのをやめて、それ一語で言い切れる言葉だけを選んで、そのどれかに当たったら除外する、という判定にしたのです。
たとえば「大人専用」ではなく、鉤括弧まで含めた「【大人専用18禁」という表記のかたまり。あるいは、その業態でしか使わないチェーン名や提携サービスの名前。こういう言葉は、静けさや料理を語る宿の紹介文にはまず出てきません。逆に「大人専用の宿」と書く高級旅館は、この一覧のどれにも触れないので残ります。
工夫したのは判定の複雑さではなく、言葉の選び方のほうでした。仕組み自体は「一覧のどれかに一致したら外す」だけで、拍子抜けするほど単純です。単純なままで誤検知を出さないように、一語ずつ「これは言い切れるか」を確かめていきます。判定ルールの叩き台はAIに出してもらい、私はひたすら結果と実際の宿を突き合わせる役に回りました。
誤検知ゼロを確かめてから、14件を削除
仕組みができても、すぐには消しませんでした。除外候補に挙がった宿を一つずつ確認して、巻き添えがないかを見ていきます。ここで一軒でも普通の旅館が混ざっていたら、判定はやり直しです。
結果は、誤検知ゼロ。候補に挙がったのはすべて狙いどおりのホテルでした。そこで初めて、14件を削除しました。数としては決して多くありませんが、家族向けの検索結果に一件でも混ざっていたら台無しだった、と思うと、やってよかった作業です。
一度きりの掃除で終わらせない
このツールのデータは定期的に更新されます。つまり、今回手作業で消しても、次の更新でまた入ってくる可能性がありました。だから除外の判定は更新の流れそのものに組み込みました。これからは新しいデータが来るたびに自動でふるいにかけられて、該当する宿は最初から入ってきません。
掃除をするのではなく、散らからない部屋にする。データの手入れはいつもこの形に持っていけると気持ちがいいなと、あらためて思いました。それにしても、「大人」という二文字の意味の広さよ。機械に言葉を扱わせようとすると、普段は意識しない日本語の奥行きに気づかされます。
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