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海のない県に「オーシャンビューの宿」特集ができていた話

公開: 2026-07-17 · #91 / 最終更新: 2026-07-17 ホテル検索失敗談データ整備

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ホテル検索のサイトには、テーマ別の特集ページがある。「絶景の宿」「離れのある宿」「温泉のある宿」といった切り口で、条件に合う宿をまとめて見られるページだ。

この特集、どうやって宿を選んでいるかというと、宿の紹介文に含まれるキーワードで機械的に分類している。紹介文に「オーシャンビュー」とあれば絶景系、「離れ」とあれば離れの宿、という具合だ。数万軒の宿を一軒ずつ人間が読んで仕分けるのは無理なので、この方式はとても便利だった。便利だったのだが、やらかした。しかも3連発で。

事件その1・海のない県のオーシャンビュー

「絶景・オーシャンビュー」の特集を、47都道府県分まとめて作ったときのこと。できあがったページを眺めていて、固まった。海のない内陸の県にも「オーシャンビューの宿」特集が生成されていたのだ。

日本には海に面していない県が8つある。その8県のページに、堂々と「オーシャンビュー」の文字。海がないのにオーシャンビューを謳ったら、それはもう嘘である。仕組みが勝手に嘘のページを作っていた、と考えるとけっこう怖い。

内陸の8県については「絶景の宿」という言い換えに差し替えて解消した。山や湖の絶景なら内陸でも嘘にならない。言われてみれば当たり前の配慮なのだが、作る前の私はまったく想像していなかった。

事件その2・「離れ」は一つじゃなかった

次は「離れ」の宿特集。母屋から独立した客室、いわゆる「離れ」に泊まれる宿を集めたページのつもりだった。

ところが中身を見ると、様子のおかしい宿が混ざっている。紹介文をたどると「喧騒を離れた宿」「駅から少し離れた宿」。……客室の離れではない。「離れる」という動詞の一部を、建物の「離れ」として拾ってしまっていたのだ。

人間なら読んだ瞬間に区別がつく。「喧騒を離れた」を読んで離れの客室を想像する人はいない。でも、キーワードの一致だけで判断する機械には、この二つがまったく同じに見える。日本語の文脈というのは、機械にはこんなに難しいのかと妙に感心してしまった。

事件その3・温泉に「触れただけ」の宿

3つ目は「温泉あり」の分類。紹介文に温泉への言及があれば温泉ありの宿、としていたら、実際には温泉が無い宿が混ざっていた。

どういうことかというと、紹介文で近隣の温泉に触れているだけの宿があるのだ。「車で少し行けば温泉地」といった書き方だ。宿としては周辺案内のつもりで書いた一文が、機械には「温泉」の一致として拾われ、温泉のある宿に化けてしまう。

温泉があると思って予約した人が現地でがっかりする姿を想像すると、これは放置できない。

機械は「単語」を読み、人間は「文脈」を読む

3つの事件に共通するのは、どれも人間が紹介文を読めば一瞬で分かる違いだった、ということだ。海のない県、動詞の「離れる」、近隣温泉の案内。全部、文脈を読めば明らかに区別できる。

でも機械は単語しか見ていない。「オーシャンビュー」という文字列があるか、「離れ」という文字列があるか。それだけだ。文字列としては完全に一致しているのだから、機械の側からすれば間違えてすらいない。間違っていたのは、単語の一致だけで判断させた私の設計のほうだった。

対処は地道だった。「喧騒を離れ」「駅から離れ」のような除外語をルールに足し、内陸県は言い換え、温泉は言及の仕方を見て弾く。誤マッチを見つけるたびにルールを一つずつ足して、少しずつ精度を上げていった。例外のパターンを、AIと手分けして潰していく作業である。

学び・生成したページは目でサンプリングする

今回の学びははっきりしている。キーワード分類は便利だが、生成した結果を目で確かめないと、嘘のページを量産する。

しかも「いくつか見て大丈夫だったからOK」では足りなかった。オーシャンビューの件は、県単位まで降りて見て初めて気づけた種類の間違いだ。海のある県のページだけ見ていたら、たぶん今も内陸の県に嘘の特集が残っていたと思う。

機械に大量のページを作らせるのは、一人で運営している身にはありがたい。ただ、作らせたものの責任は私にある。生成結果を県単位までサンプリングして目を通す、という地味な工程を、これからは仕組みの一部として組み込んでいくつもりだ。日本語の文脈は、まだ当分、人間の目の仕事らしい。


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