自分で説明できないフィルタを、地図から取り外した話
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「楽しめる以上」フィルタを、はじめて解剖した
子連れおでかけ地図には、スポットを絞り込む「楽しめる以上」というフィルタがある。内部の点数が一定以下のスポットを、地図の初期表示から落とす仕組みだ。
このフィルタ、実は作ってから一度も中身をちゃんと見たことがなかった。「点数の低いスポットを隠せば、地図がすっきりするだろう」くらいの気持ちで入れたものだ。ある日、地図を自分で眺めていて、広くて設備もあって子連れで一日過ごせそうな公園までが初期表示から漏れているのに気づいた。この点数はいったい何を隠しているのか。気になって、今回はじめて解剖してみることにした。
フィルタの中から牛丼屋が出てきた
点数が低くて非表示になっているスポットは、約5万件あった。内訳を調べて、頭を抱えた。
博物館が2.5万件。小さな街区公園が1.9万件。ここまでは、まだ分かる。規模の小さい施設が点数で沈むのは、想像の範囲内だ。
問題はその先だった。牛丼屋やラーメン屋まで混ざっていたのだ。子連れおでかけ地図の「楽しめる以上」フィルタが、博物館と街区公園と牛丼屋を、同じ理屈でまとめて隠していた。
そして一番まずかったのは、その「同じ理屈」を、作った本人の私が説明できなかったことだ。なぜこの博物館は落ちて、あの公園は残るのか。点数の基準を聞かれても、答えられない。自分のツールなのに、である。
点数式の何が駄目だったのか
冷静に考えると、点数による足切りには根本的な弱点があった。
まず、点数は利用者から見えない。地図に出てこない理由が「内部の点数が低いから」では、利用者側からは「なぜか出てこない」としか見えず、指摘のしようもない。現に、規模は小さくても子連れには十分な公園までが、この点数で黙って沈んでいた。
次に、点数はカテゴリの違いを潰してしまう。博物館と牛丼屋は、そもそも比べるものではない。それを一つの数直線に乗せて一律に切るから、「規模は小さいが子連れには十分な公園」と「そもそもおでかけ先ではない店」が、同じ側に落ちる。
そして何より、基準を説明できない絞り込みは、直しようがない。おかしな結果が出ても、どこを直せばいいのか分からない。作った本人がこれなのだから、利用者にはもっと分からない。
「チェックしたカテゴリだけ表示」に作り替えた
そこで、点数による足切りをやめることにした。代わりに採用したのは、拍子抜けするほど単純な仕組みだ。
公園や博物館を規模で分割し、カテゴリとして並べる。利用者は、見たいカテゴリにチェックを入れる。チェックしたカテゴリだけが地図に表示される。それだけである。
この方式なら、あるスポットが表示されない理由は「そのカテゴリのチェックが外れているから」の一言で説明がつく。大きな公園は見たいが小さな街区公園は要らない、という人はチェックを外せばいいし、近所の小さな公園こそ知りたい、という人はチェックを入れればいい。判断するのは私の作った点数ではなく、利用者自身だ。
作り替えの実装はAIの力を借りた。ただ、今回の中心は書き換えそのものではなく、「どう分ければ人に説明できるか」を考える時間だったと思う。
説明できないものは、載せてはいけなかった
今回の一件で身に染みたのは、「自分で説明できない絞り込みは、利用者にはもっと分からない」ということだ。
点数式は、作る側にとっては楽だった。基準を言葉にしなくても、数字が勝手に線を引いてくれる。でもその楽をした分だけ、仕組みは説明のつかないブラックボックスになり、ちゃんとした公園を黙って隠し、牛丼屋を博物館と同じ箱に詰めていた。
一度中身をのぞいてみて、本当によかったと思う。あのまま点数を放っておいたら、私はフィルタの中身を見ないまま、「楽しめる以上」という自分でも意味を答えられないボタンを、地図に置き続けていたと思う。
これからは新しい仕組みを入れるとき、一つだけ自問することにした。「この動きを、聞かれたら一言で説明できるか」。できないなら、それはまだ載せる段階ではないのだ。
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